伊方原発訴訟(最判平4.10.29)
争点 原子炉の安全性に関する審査に国の裁量は認められるか?裁判所の審理・判断はどのような観点から進められるべきか?また、原子炉設置許可処分は違法か?
理由 原子炉等規制法24条2項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条1項3号及び4号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。
原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門委員会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らして判断する。
原子力委員会若しくは原子炉安全専門委員会が本件原子炉施設のの安全性について行った調査審議及び判断に不合理な点があるとはいえず、これを基にしてされた本件原子炉設置許可処分を適法であるとした。
結論 国の裁量は認められる。判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門委員会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。原子炉設置許可処分は適法である。