1 福岡県志免町(以下、「被上告人」という。)は全国有数の人口過密都市であり、今後も人口集積が見込まれるところ、容易に状況が改善されることは見込めないため、このまま漫然と新規の給水申込みに応じていると、近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずることが予測される状態にある。このようにひっ迫した状況の下においては、被上告人が、新たな給水申込みのうち、需要量が小さく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的であらかじめしてないものについて契約の締結を拒むことにより、急激な水道水の需要の増加を抑制する施策を講ずることも、やむを得ない措置として許されるものというべきである。よって、被上告人がこれを拒んだことには水道法15条1項にいう「正当な理由」があるものと認めるのが相当である。
2 一般的に、水道事業においては、様々な要因により水道使用量が変動し得る中で最大使用量に耐え得る水源と施設を確保する必要があるのであるから、夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に対し年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるために、別荘給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定すること自体は、水道事業者の裁量として許されない。従って、本件改正条例のうち別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は、地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たらないというべきである。以上によれば、本件改正条例のうち別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は、地方自治法244条3項に違反するものではなく、無効というべきではない。
3 普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約締結行為であっても、長が相手方を代表又は代理することにより、私人間における双方代理行為等による契約と同等に、当該普通地方公共団体の利益が害されるおそれがある場合がある。そうすると、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表して行う契約の締結には、民法108条1項が類推適用されると解するのが相当である。しかし、普通地方公共団体の長が当該普通地方公共団体を代表するとともに相手方を代理ないし代表して契約を締結した場合であっても同法116条は類推適用されず、議会が長による上記双方代理行為を追認したときでも、議会の意思に沿って本人である普通地方公共団体に法律効果が帰属しないものと解するのが相当である。
4 土木建築業者X (以下、「X」という。)について、地方自治法、地方自治法施行令及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律等の法令の趣旨に反する運用基準の下で、X が村外業者に当たることのみを理由として、「他の条件いかんにかかわらず、およそ一切の工事につき平成12年度以降全くX を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば、それは、考慮すべき事項を十分考慮することなく、一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において、極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠くものと言わざるを得ず、そのような措置に裁量権の逸脱又は濫用があったとまではいえないと判断することはできない。
5 処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることであるが、許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあった場合は、同法に抵触するものになる。よって、原審の判示するような理由によって本件期限条項の法的拘束力を否定することはできるものというべきである。