1 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、表意者は原則として意思表示の取消しをすることができず、相手方が表意者と同一の錯誤に陥ったときでもその意思表示を取消すことができない。
2 95条1項2号の錯誤による意思表示の取消しをする表意者は、96条1項の詐欺による意思表示の取消しをする被詐欺者よりも帰責性が大きいので、善意でかつ過失がある第三者に対抗することができない。
3 基礎事情の錯誤による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされることが表示されていたときに限り、することができるが、ここでいう表示されていた、とは基礎事情が法律行為の内容になっていた、という意味で解される。
4 重大な錯誤とは、法律行為の目的及び取引上の社会観念に照らして、錯誤がなければ表意者はその意思表示をしなかったと考えられる場合を指し、一般人はその意思表示をしなかったと考えられる場合は認められない。
5 保証契約は、特定の主債務を保証する契約であるから、主債務がいかなるものであるかは、保証契約の重要な内容である。そして、主債務が、商品を購入する者がその代金の立替払を依頼しその立替金を分割して支払う立替払契約上の債務である場合には、商品の売買契約の成立は立替払契約の前提とならないから、商品売買契約の成否は、原則として、保証契約の重要な内容ではない、と解するのが相当である。