ア 政府の自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分は、国家が権力的手段を以て農地の強制買上を行うものであって、対等の関係にある私人相互の経済取引を本旨とする民法上の売買とは、その本質を異にするので、かかる私経済上の取引の安全を保証するために設けられた民法177条の規定は、自作法による農地買収処分には、その適用を見ないと解すべきである。
イ 国税滞納処分においては、国はその有する租税債権につき、自ら執行機関として、強制執行の方法により、その満足を得ようとするものであるが、滞納者の財産を差し押えた国の地位は、民事訴訟法上の強制執行における差押債権者の地位に類するものとはいえないので、滞納処分による差押の関係においては、民法177条は適用されないと解するのが相当である。
ウ 会計法30条が金銭の給付を目的とする国の権利及び国に対する権利につき5年の消滅時効期間を定めたのは、国の権利義務を早期に決済する必要があるなど主として行政上の便宜を考慮したことに基づくものであるから、私人相互間における損害賠償の関係とその目的性質を異にするので、国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は民法167条による20年と解すべきではなく、会計法30条所定の5年と解すべきである。
エ 公営住宅の使用関係は私法上の賃貸借関係に通常用いられる用語を使用して公営住宅の使用関係を律しているので、民法及び借家法が公営住宅法及びこれに基づく条例に優先して適用され、その契約関係を規律するについては、信頼関係の法理の適用があると解すべきである。
オ 建築基準法63条は、防火地域又は準防火地域にある外壁が耐火構造の建築物について、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる旨規定しているが、これは同条所定の建築物に限り、その建築については民法234条1項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である。
1 ア・ウ
2 ア・オ
3 イ・ウ
4 イ・オ
5 ウ・エ