ア 上告人(漁業協同組合の組合員)らは、本件公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者というべきであるが、本件埋立免許及び本件竣功認可が右の権利に対し直接の法律上の影響を与えるものでないということはできない。そして、旧埋立法には、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む者の権利を保護することを目的として埋立免許権又は竣功認可権の行使に制約を課している明文の規定はないが、同法の解釈からかかる制約を導くことは可能である。よって、上告人らは、本件埋立免許又は本件竣功認可の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者ということができ、その取消しを訴求する原告適格を有しているということができる。
イ 航空法は飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。したがって、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の1日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する飛行機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。
ウ 被上告人(近隣住民)らは本件原子炉から約11キロメートルないし約15キロメートルの範囲内の地域に居住していること、本件原子炉は研究開発段階にある原子炉である高速増殖炉であり、その電気出力は28万キロワットであって、炉心の燃料としてはウランとプルトニウムの混合酸化物が用いられ、炉心内において毒性の強いプルトニウムの増殖が行われるものであることが記録上明らかであって、かかる事実に照らすと、被上告人らは、いずれも本件原子炉の設置許可の際に行われる原子炉等規制法24条1項3号所定の技術的能力の有無及び4号所定の安全性に関する各審査に過誤、欠落がある場合に起こり得る事故等による災害により直接的かつ重大な被害を受けるものと想定される地域内に居住する者というべきであるから、本件設置許可処分の無効確認を求める本件訴訟において、行政事件訴訟法36条所定の「法律上の利益を有する者」に該当するものと認めるのが相当である。
エ 被上告人(近隣住民)らは本件原子炉施設の設置者である動力炉・核燃料開発事業団に対し、人格権等に基づき本件原子炉の建設ないし運転の差止めを求める民事訴訟を提起しているが、右民事訴訟は、行政事件訴訟法36条にいう当該処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えに該当するものとみることができ、また、本件無効確認訴訟と比較して、本件設置許可処分に起因する本件紛争を解決するための争訟形態としてより直截的で適切なものであるといえるから、被上告人らにおいて右民事訴訟の提起が可能であって現にこれを提起していることは、本件無効確認訴訟が同条所定の前記要件を欠くことの根拠となり得る。また、他に本件無効確認訴訟が右要件を欠くものと解すべき事情はうかがわれる。
オ 墓地、埋葬等に関する法律一〇条一項は当該墓地等の周辺に居住する者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。また、大阪府墓地等の経営の許可等に関する条例七条一号は、墓地及び火葬上の設置場所の基準として、「住宅、学校、病院、事務所、店舗その他これらに類する施設の敷地から三百メートル以上離れていること。ただし、知事が公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは、この限りでない。」と規定している。しかし、同号は、その周辺に墓地及び火葬場を設置することが制限されるべき施設を住宅、事務所、店舗を含めて広く規定しており、その制限の解除は専ら公益的見地から行われるものとされていることにかんがみれば、同号がある特定の施設に着目して当該施設の設置者の個別的利益を特に保護しようとする趣旨を含むものとは解し難い。したがって、墓地から三〇〇メートルに満たない地域に敷地がある住宅等に居住する者が法一〇条一項に基づいて大阪府知事のした墓地の経営許可の取消しを求める原告適格を有するものということはできない。
1 ア・イ
2 ア・エ
3 イ・ウ
4 ウ・オ
5 エ・オ