ア たとえ上告人(地方鉄道の利用者)らがD鉄道株式会社の路線の周辺に居住する者であって通勤定期券を購入するなどしたうえ、日常同社が運行している特別急行旅客列車を利用しているとしても、上告人らは、本件特別急行料金の改定(変更)の認可処分によって自己の権利利益をを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に当たるということができ、右認可処分の取消しを求める原告適格を有するというべきであるから、本件訴えは適法である。
イ 静岡県文化財保護条例及び文化財保護法において、文化財の学術研究者の学問研究上の利益の保護について特段の配慮をしていると解しうる規定を見出すことはできるから、そこに、学術研究者の右利益について、一般の県民あるいは国民が文化財の保存・活用から受ける利益を超えてその保護を図ろうとする趣旨を認めることはできる。したがって、上告人らは、本件遺跡を研究の対象としてきた学術研究者であるので、本件史跡指定解除処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するので、本件訴訟における原告適格を有するといわざるをえない。
ウ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令六条一号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号ロのように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。よって、施行令六条一号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。
エ 国税徴収法47条1項に基づく差押処分は、滞納者の持分と使用収益上の不可分一体をなす持分を有する他の共有者についても当該不動産に係る用益権設定等の処分が制約を受け、その処分の権利が制限されることとなる。以上に鑑みると、滞納者と他の者との共有に係る不動産につき滞納者の持分が国税徴収法47条1項に基づいて差し押さえられた場合における他の共有者は、その差押処分の法的効果による権利の制限を受けるものであって、当該処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として、その差押処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり、その取消訴訟における原告適格を有するものと解するのが相当である。
オ 自転車競技法及び自転車競技法施行規則が位置基準によって保護しようとしているのは、不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であり、原告適格を基礎付けるに足りるものであるといわざるを得ない。したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者でも、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして、位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・オ
4 ウ・エ
5 エ・オ