ア 抗告訴訟の対象となるべき行政庁の行為は、対国民との直接の関係において、その権利義務に関係あるものたることを必要とし、行政機関相互間における行為は、その行為が、国民に対する直接の関係において、その権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものでない限りは、抗告訴訟の対象とならない。しかるに本件消防長の同意は、知事に対する行政機関相互間の行為でなく、これにより対国民との直接の関係においてその権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為と認められるから、これを訴訟の対象となる行政処分ということができる。
イ 都市計画区域内において高度地区を指定する決定は、都市計画法に基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地区内においては、建築物の高さにつき従前と異なる基準が適用され、これら基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから、右決定が、当該地区内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないので、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地区内の特定多数の者に対する特殊的具体的なものであり、このような効果を生ずるということから右地区内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することができる。
ウ 登録免許税31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたると解するのが相当である。
エ 本件別表の無効確認を求める被上告人らの訴えは、本件改正条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分にあたることを前提に、行政事件訴訟法3条4項の無効等確認の訴えとして、本件改正条例により定められた本件別表が無効であることの確認を求めるものである。しかしながら、抗告訴訟の対象となる行政処分とは、行為をいうものである。本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を特別的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものであり、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することができるから、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるというべきである。
オ 公の施設である保育所を廃止するのは、市町村長の担任事務であるが、これについては条例をもって定めることが必要とされている。条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものではないことはいうまでもないが、本件改正条例は、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的効果を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。
1 ア・イ
2 ア・ウ
3 イ・エ
4 ウ・オ
5 エ・オ