1 本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約により設置されたものであるというのであり、原判決が被上告人都において本件ごみ焼却場の設置を計画し、その計画案を都議会に提出した行為は被上告人都自身の内部的手続行為に止まらないと解するのが相当である。それ故、仮に右設置行為によって上告人らが所論のごとき不利益を被ることがあるとしても、右設置行為は、被上告人都が公権力の行使により直接上告人らの権利義務を形成し、またはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するものということを得ず、原判決がこれをもって行政事件訴訟特例法にいう「行政庁の処分」にあたるからその無効確認を求める上告人らの本訴請求を適法であるとしたことは、結局正当である。
2 被上告人税関長の関税定率法による通知等は、その法律上の性質において被上告人の判断の結果の表明、すなわち観念の通知であるというものなので、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつ、これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものというべきではないので、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないもの、と解するのが相当である。
3 採用内定通知によっては、上告人が、被上告人東京都の職員たる地位を取得するものではなく、また、被上告人東京都知事において上告人を職員として採用すべき法律上の義務を負うものでもないと解するのが相当である。そうすると、被上告人東京都において正当な理由がなく右採用内定を取り消しても、これによって、右内定通知を信頼し、東京都職員として採用されることを期待して他の就職の機会を放棄するなど、東京都に就職するための準備を行った者に対し損害賠償の責任を負うことはなく、右採用内定の取消し自体は、採用内定を受けた者の法律上の地位ないし権利関係に影響を及ぼすものではないから、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するものということができず、右採用内定者においてその取消しを訴求することはできないというべきである。
4 道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下「通告」という。)があると、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずることになる。ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされている。よって、通告に対する行政事件訴訟法による取消訴訟は適法というべきである。
5 食品衛生法違反通知書による本件通知は、食品衛生法16条に根拠を置くものであり、厚生労働大臣の委任を受けた被上告人検疫所長が、上告人に対し、本件食品について、食品衛生法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。そして、本件通知により、上告人は、本件食品について、関税法70条2項の「検査の完了又は条件の具備」を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、関税法70条3項により輸入の許可も受けられなくなるのであり、関税法基本通達に基づく通関実務の下で、輸入申告書を提出しても受理されずに返却されることとなるのである。したがって、本件通知は、上記のような法的効力を有するものであって、取消訴訟の対象となると解するのが相当である。