1 国と公務員との間における主要な業務として、法は、公務員が職務に専念すべき義務並びに法令及び上司の命令に従うべき義務を負い、国がこれに対応して公務員に対し給与支払義務を負うことを定めているので、国の義務は右の給付義務にとどまり、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負わない。
2 地方公共団体のような行政主体が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合でも、右施策が社会情勢の変動等に伴って変更されることがあることはもとより当然であって、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。しかし、右決定が単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、一般の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す全体的、抽象的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が短期にわたる当該施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合には、右特定の者は、右施策が右活動の基盤として維持されるものと信頼し、これを前提として右の活動ないしその準備活動に入るのが通常である。
3 公営住宅法及び条例の規定によれば、公営住宅の使用関係には、公の営造物の利用関係として公法的な一面があることは否定しえないところであって、入居者の募集は公募の方法によるべきことなどが定められているが、他方、入居者が右使用許可を受けて事業主体と入居者との間に公営住宅の使用関係が設定されたのちにおいても、前示のような法及び条例による規制があるので、事業主体と入居者との間の法律関係は、基本的には私人間の家屋賃貸借関係と異なるところである。
4 租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理特に租税法律主義の原理が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。
5 地方自治法236条2項が権利の消滅時効につき当該普通地方公共団体による援用を要することとしたのは、その権利については、その性質上、法令に従い適正かつ画一化にこれを処理することが、当該普通地方公共団体の事務処理上の便宜及び住民の平等的取扱いの理念に資することから、時効援用の制度を適用する必要があると判断されたことによる。